本論文は,モノローグ的と批判されるカント実践哲学の再検討を行う。カントによれば,理性的存在者はフェノメノンとヌーノメンという二つの性質を持っているのだが,それがいかにして同一の主体において「二重に」現れてくるのか,という点に焦点を当てて論じている。この「二重性」は,道徳法則の働きによって他者の「均質性」と「異質性」としてあらわれると解釈することで,カント実践哲学のモノローグ性を克服する可能性を示し,実践的複数主義としてのカント解釈のあらたな問題圏を切り開いてみたい。This paper t...