正井 隆晶

本研究は、iPadを活用した視覚支援方法の研究として、A県知的障害特別支援学校の高等部の作業学習の授業において、iPadのアプリケーションを用いた教材を作成し、実際の授業の中での使用を通して、生徒への学習効果の有効性と、支援を行う教員への有用性に繋がるかを検討した。

近年、美術館では視覚障害児者の美術鑑賞が様々に取り組まれている。しかし、彫刻などの立体作品鑑賞の取り組みが進む一方で、視覚障害児者の絵画鑑賞の方法は課題となっている。本研究では、「触れる美術鑑賞」の変遷や鑑賞教材の作成方法・研究動向等を概観し、視覚障害特別支援学校で学ぶ児童生徒も含めて、視覚障害児者の絵画鑑賞における現状と課題について考察した。今後の課題としては、①2次元凸教材としての触図作成における絵画表現の翻案方略の体系化の課題、②触図を使用する側の視覚障害児者への働きかけとしての媒介学習の体系化の課題、③視覚障害特別支援学校と美術館の連携における教材データベース構築の課題等が示唆された。