Osaka Kyoiku University Researcher Information
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研究者業績
基本情報
- 所属
- 大阪教育大学 総合教育系 准教授
- 学位
- 学士(文学)(関西学院大学)修士(心理学)(関西学院大学)博士(心理学)(関西学院大学)
- 研究者番号
- 70611440
- J-GLOBAL ID
- 201401001336915044
- researchmap会員ID
- B000241357
- 外部リンク
研究キーワード
10研究分野
1経歴
5-
2017年4月 - 現在
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2015年4月 - 2017年3月
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2014年4月 - 2015年3月
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2011年4月 - 2014年3月
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2009年4月 - 2011年3月
学歴
3-
2007年4月 - 2011年3月
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2005年4月 - 2007年3月
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2001年4月 - 2005年3月
委員歴
12-
2023年6月 - 現在
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2023年4月 - 現在
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2022年6月 - 現在
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2017年7月 - 現在
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2017年 - 現在
受賞
2-
2024年10月
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2022年10月
論文
55-
LD研究 31(1) 46-57 2022年2月25日 査読有り本研究の目的は,小学校5年生学級において,学級規模ポジティブ行動支援を実施し,その効果を検証することであった。学級規模ポジティブ行動支援では,学級目標をもとに学級担任と児童が共同でポジティブ行動マトリクスを作成し,目標行動を決定した。その後,特に集中的に改善に取り組む目標行動として,学級担任が話し出したときにきりかえて話を聞く行動(きりかえ行動)と児童同士で教え合う行動を選定した。その後,これらの目標行動に対して行動支援計画表を作成し,介入を実施した。介入実施中にも,児童と取り組みの経過を確認しながら介入方法を修正していった。介入効果を検証するために,きりかえ行動の回数および教え合い行動をしたことを報告するカードの枚数を測定した。また,日本版SLAQ(大対ら,2013)も実施した。介入の結果,目標行動が増加し,学校肯定感も有意に向上したことが明らかとなった。
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International Journal of Positive Behavioural Support 12 4-18 2022年 査読有り招待有り
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International Journal of Positive Behavioural Support 12 19-28 2022年 査読有り招待有り
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認知行動療法研究 47(2) 1-13 2021年 査読有り筆頭著者責任著者本研究の目的は、発達障害のある児童2名の漢字の読みに対して刺激ペアリング手続きによる遠隔地学習支援を実施し、その効果と社会的妥当性について検討することであった。事例Iにおいてはタブレット端末による刺激ペアリング手続きの教材を用いた自律的な学習をビデオ通話およびメールで遠隔地学習支援を行い、事例IIにおいてはビデオ通話を用いて教材提示から評価までをすべて遠隔で実施した。両事例とも、課題間多層プローブデザインを用いて介入効果を検証した結果、漢字単語の読みの正答率が向上した。また、対象児と保護者を対象に実施した社会的妥当性のインタビューから、本研究の遠隔地学習支援は高く評価されていた。一方で、事例Iにおいては介入効果の維持に一部課題が残った。介入効果を維持させるための介入手続きの改善、介入効果の般化の検討、介入実行度の検討など、今後の課題について考察した。
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行動分析学研究 34(2) 198-210 2020年3月 査読有り筆頭著者責任著者現在、米国の学校場面では、学校規模ポジティブ行動支援(school-wide positive behavior support: SWPBS)と介入に対する反応性モデル(response to intervention: RTI)のような、システムアプローチが幅広く実践され、研究されている。学業支援を中心とするRTIは、日本の特別支援教育においても少しずつ紹介されるようになり、RTIを参考とした実践研究も行われてきているがその数は少ない。RTIはSWPBSとの共通点も多く、行動分析学との関連も深いが、そのことは日本においてはほとんど紹介されていない。本稿では、RTIの主要な要素(多層予防システム、スクリーニング、プログレス・モニタリング、データに基づく意思決定)について解説し、RTIの構成要素(データに基づく意思決定、チームアプローチ)について、教員の指導行動に対する刺激性制御の観点から整理する。そして、近年のRTIとSWPBSを統合した多層支援システム(multi-tiered system of support: MTSS)について紹介する。最後に、日本におけるシステムレベルでの学校改革に向けた課題について、学校内および学校外の随伴性の整備の観点から整理する。
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行動分析学研究 34(2) 244-257 2020年3月 査読有り研究の目的 本研究では、SWPBSの第1層支援を実施し、その効果と社会的妥当性を検討することを目的とした。研究計画 ABデザインを用いた。評価尺度については3つの時期に測定し、それぞれの時期の全校児童のスコアの平均を比較した。場面 公立小学校1校において実施した。参加者 対象校の全ての児童と教職員が本研究に参加した。介入 ポジティブ行動マトリクスを作成し、各目標行動の行動支援計画を立案し実行した。行動の指標 目標行動に従事している人数をカウントして得られたデータ、あるいはインターバル・レコーディング法を用いて得られたデータを指標とした。他に質問紙法によって評価尺度のデータや社会的妥当性に関するデータも収集した。結果 介入後に目標行動が増加し、評価尺度のスコアに改善がみられた。また一定の社会的妥当性が示された。結論 本研究において実施したSWPBS第1層支援の効果と社会的妥当性が確認できた。しかし、チームマネジメント、データに基づく第2層支援や第3層支援への移行、データの信頼性など、いくつかの課題が示された。
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LD研究 29(1) 45-56 2020年2月 査読有り筆頭著者責任著者本研究では,小学生用の算数のカリキュラムに基づく尺度 (算数CBM) を開発し,その 信頼性と妥当性を検討することを目的とした。研究1では,小学1年生から6年生 (N = 1,969) に対して算数CBMを1年間各学期末に実施した。また,年度末に算数学力検査 を実施して関連を検討した。結果,開発した算数CBMは時間経過に伴って得点が向上 していた。さらに,算数学力検査と有意な関連が確認され,併存的妥当性および予測 的妥当性が高いことが明らかとなった。研究2では,小学1年生から6年生 (N = 546) を 対象として,算数CBMの再検査信頼性および代替形式信頼性を検討した。その結果 ,高い再検査信頼性と代替形式信頼性を備えていることが明らかとなった。本研究の 結果から,開発した算数CBMはスクリーニングおよびプログレス・モニタリングとし て機能しうるツールであることが示された。
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LD研究 29(4) 237-244 2020年 査読有り筆頭著者責任著者
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LD研究 = Japanese journal of learning disabilities 27(3) 331-339 2018年8月 査読有り筆頭著者責任著者本研究では,小学4年生の漢字の読み書き指導におけるクラスワイドの刺激ペアリング手続きの効果を検証することを目的とした。公立小学校の通常学級4年生の児童(N=23)が参加した。刺激ペアリング手続きは,教室の前方にプロジェクタで文字刺激・音声刺激・意味刺激を呈示するという方法で実施した。漢字の読み書きテストの平均正答数および全問正答した児童の割合を従属変数とした。指導の結果,児童の漢字の読み書きテストの平均正答数が増加し,全問正答した児童の割合も増加した。また,社会的妥当性についての児童へのアンケートの結果,刺激ペアリング手続きは受け入れやすい指導法であることが明らかとなった。クラスワイドの刺激ペアリング手続きは,階層的な指導モデルの第1層における指導法として機能しうることが示された。
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Journal of Health Psychology Research 31(1) 31-41 2018年8月1日 査読有り<p>Bullying is a major problem in schools. Many studies conducted in the U.S. and Europe have indicated relationships between parenting behaviors and bullying and peer victimization. However, only a few studies in Japan have investigated these relationships. Therefore, the study examined associations between parenting behaviors and experiences of bullying and victimization in all elementary and junior-high schools students in a suburban Japanese city. Parents assessed their parenting behaviors and the degree of their children's experience of bullying behaviors or victimization in the last year using parent-reported measures. Multinomial logistic regression analysis indicated that parental involvement and monitoring was associated with experiences of victimization at school. Furthermore, negative parenting behaviors, especially rigid discipline, was related to all experiences of bullying, including the bully, the victim, and the bully-victim. These findings suggest that the improvement of parenting behaviors could prevent children and adolescents from bullying other students or being victimized at schools.</p>
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発達心理学研究 27(2) 158-166 2018年6月20日 査読有り筆頭著者責任著者<p>本研究では,単一市内の全公立小・中学校の児童・生徒(小学3年生から中学3年生)を対象とした縦断データの分析を行うことで,攻撃性の安定性に関して検討した。3つの学年コホート(合計約2,500名)の小・中学生の5年間の縦断データを対象に,潜在特性–状態モデル(Cole & Maxwell, 2009)を用いた多母集団同時分析を行った。攻撃性の測定には,小学生用攻撃性質問紙(坂井ほか,2000)を用いた。分析の結果,攻撃性は特性–状態モデルの適合が最も良好であり,特性変数と自己回帰的な状況変数の双方が攻撃性の程度を規定していることが明らかとなった。また,性差が見られるものの,攻撃性は中程度の安定性をもつことも明らかとなった。さらに,特性変数による説明率は,学年段階が上がるにつれて上昇することが明らかとなり,小学校中学年頃までは攻撃性の個人差はまだそれほど安定的ではないが,思春期に移行する小学校高学年頃から中学校にかけて個人差が固定化していくことが示された。</p>
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教育心理学年報 57 179-191 2018年 査読有り招待有り筆頭著者責任著者<p> 現在,日本の教育現場において応用行動分析学に基づく実践や研究が盛んに行われるようになってきているが,教育の中心的なテーマである学習指導に関する実践や研究は少ない。本稿では,学習指導に対する応用行動分析学によるアプローチについて概説した。まず,具体的な行動としての学業スキルと環境との相互作用という観点から学習問題を捉えることを解説し,学業スキルのアセスメント方法と応用行動分析学が重視する観点を述べた。その後,最近10年間の日本における研究動向(刺激等価性に基づく読み書き指導等)と米国における研究動向(遂行欠如とスキル欠如,指導の階層性,短期実験的分析)を展望した。そして,応用行動分析学の知見を基礎としながらも他の研究領域と連携して発展してきた指導カリキュラム(直接教授法)や学習指導モデル(response to intervention)を紹介した。最後に,今後日本において応用行動分析学に基づく学習指導研究を展開する上での課題について述べた。</p>
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Psychology 8 2377-2389 2017年12月 査読有り筆頭著者責任著者
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行動分析学研究 31(2) 153‐162-162 2017年2月15日 査読有り筆頭著者責任著者<p><b>研究の目的</b> 本研究では知的障害のある児童2名の漢字熟語の読みを対象に、刺激ペアリング手続きの効果と般化および社会的妥当性を検討した。<b>研究計画</b> 教材間多層プローブデザインを用いて指導効果を検証した。<b>場面</b> 公立小学校特別支援学級の教室内で担任である第二著者が実施した。<b>参加児</b> 特別支援学級に在籍する知的障害のある児童2名が参加した。<b>介入</b> 刺激ペアリング手続きでは、ディスプレイ上に、漢字熟語とその読み方の音声刺激が同時に2秒間呈示され、その後、漢字熟語の意味を表すイラストを2秒間呈示した。児童は、音声刺激が聞こえたら直後に復唱することが求められた。<b>行動の指標</b> 正しく読めた漢字熟語の割合 (正答率) を指標とした。<b>結果</b> 参加児2名ともに、刺激ペアリング手続きによって漢字熟語の読みの正答率が増加し、その効果は10日間維持されていた。また、獲得した漢字熟語の読みは、文章中の漢字熟語の読みへと般化したことが確認された。さらに、個人差はあるものの、刺激ペアリング手続きは特別支援学級教員にとっておおむね受け入れやすいと評価された。<b>結論</b> 刺激ペアリング手続きによる漢字の読みに対する効果が示され、この指導法は学校現場においても実行可能性が高いことが示唆された。</p>
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小児の精神と神経 = Psychiatria et neurologia paediatrica Japonica : 日本小児精神神経学会機関誌 56(1) 47-56 2016年4月1日 査読有り本研究は、抑うつの早期発見のためのひとつの指標として、より抑うつ傾向が低い日常生活習慣を明らかにすることを目的とした質問紙調査を行った。単一市内にある全公立小中学校に在籍する、小学校4年生から中学校3年生までの児童生徒5,021名を対象とした。日常生活習慣(起床時刻・就寝時刻・朝食・夕食・宿題・宿題以外の学習・手伝い・昼寝)を要因として、抑うつ傾向との関連について分散分析を行った。結果、すべての日常生活習慣において、抑うつ傾向に関する主効果が認められ、日常生活習慣と抑うつ傾向との関連性が明らかになった。また、起床時刻および就寝時刻においては、学年段階との交互作用も認められた。したがって、小中学生の日常生活習慣を知ることは、抑うつに関する簡便なアセスメントとなる可能性が示唆された。(著者抄録)
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発達心理学研究 27(1) 59-71 2016年3月20日 査読有り保育士評定による年長時の発達特性が,就学後6年間の心理社会的不適応をどのように予測するかを検討するとともに,その予測精度を最大化する観点から,保育要録用発達評価尺度(DSNR)を開発した。単一市内全保育所および小学校を対象とした7年間の縦断調査によって得られた6つの学年コホートの計2,400名のデータを,交差妥当化のため,ランダムに訓練データとテストデータに分割して使用した。保育所での発達評価には,165項目からなる「保育記録による発達尺度(NDSC)」を用いた。重回帰分析の結果,外在化問題に対しては,注意欠如多動性障害(ADHD)に関連する「落ち着き」や「注意力」,内在化問題に対しては,自閉症スペクトラム障害(ASD)に関連する「社会性」,「順応性」,「コミュニケーション」や発達性協調運動障害(DCD)に関連する「粗大運動」,学業成績に対しては,ADHDに関連する「注意力」,ASDに関連する「コミュニケーション」,DCDに関連する「微細運動」が有意な効果を示した。この分析で有意な効果を示した下位尺度について,項目レベルの重回帰分析を行い,予測に貢献していた35項目をDSNRの項目として選定した。確認的因子分析により,DSNRの信頼性と因子的妥当性が確認された。また,DSNRは大幅な項目数の縮減にもかかわらず,就学後の心理社会的不適応に対してNDSCと同等以上の予測力を示した。
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教育心理学研究 64(2) 170-183 2016年 査読有り一般小中学生における食行動異常の実態について, 性別・学年による差異, 併存症状としてのメンタルヘルス指標との関連, リスク要因としての社会的不適応との関連という3つの観点から検討した。一般小中学生を対象に質問紙調査を実施し, 4,952名(男子2,511名, 女子2,441名)から有効回答を得た。独自に作成した小中学生用食行動異常尺度について確認的因子分析を行った結果, "やせ願望・体型不満"と"過食"の2因子構造が支持されるとともに, 性別, 学年段階, 体型による因子構造の不変性が確認された。"やせ願望・体型不満"は, 全体に女子が男子より高い得点を示したが, 特に中2, 中3で女子の得点が顕著に高くなっていた。"過食"では顕著な男女差や学年差が見られなかったが, 女子では, 学年とともにやや得点の上昇が見られた。メンタルヘルスとの関連では, "やせ願望・体型不満"が抑うつと比較的強い相関を示したのに対し, "過食"は攻撃性と比較的強い相関を示した。社会的不適応との関連では, "学業", "家族関係"に加え, 男子では"友人関係", 女子では"教師関係"が食行動異常と有意な関連を示した。
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発達心理学研究 26(4) 332-343 2015年12月20日 査読有り本研究では,単一市内の全保育所・公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連を検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を測定した。いじめ被害及び加害は,関係的いじめ,言語的いじめ,身体的いじめのそれぞれのいじめについて測定した。保育所年少から中学3年生までの計8396名の幼児児童生徒のデータに対する順序ロジスティック回帰分析の結果,他の独立変数の効果を調整しない場合には,いじめ被害及び加害ともに,いずれのいじめに対してもASD傾向とADHD傾向の効果が示された。これに対して,他の独立変数の効果を調整した場合には,2つの発達障害傾向のいじめに対する影響は異なるものであった。いじめ被害では,全てのいじめでASD傾向の主効果が確認されたが,ADHD傾向の主効果が確認されたのは関係的いじめと言語的いじめのみであり,オッズ比もASD傾向より小さかった。いじめ加害では,全てのいじめでADHD傾向の主効果が確認されたが,ASD傾向ではいずれのいじめにおいても主効果は確認されなかった。これに加えて,学年段階や性別との交互作用についてもASD傾向とADHD傾向で違いが見られた。
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小児の精神と神経 55(2) 117-126 2015年7月1日 査読有り強迫性障害は、強迫観念および強迫行為といった強迫症状によって特徴づけられる児童思春期に好発する精神疾患であり、一般児童生徒でも強迫症状の傾向を持つ子どもが存在することが知られている。本研究では子どもの強迫傾向を質問紙で測定し、一般児童生徒の強迫傾向から抑うつ、攻撃性の問題がどの程度予測することが可能かを縦断的に検討した。単一市内全校調査によって、4年間にわたり公立小中学校の児童生徒2,275名に対して質問紙調査を実施した。その結果、一般児童生徒では強迫傾向が高いほど、のちに抑うつの出現する可能性が示され、抑うつほどではないが攻撃性が上昇する傾向が示された。すなわち強迫傾向は、のちに現れる抑うつや攻撃性の予兆となる前駆症状の一つであることを示唆している。子どもの強迫傾向を事前にとらえることで、のちの抑うつや攻撃性の出現リスクを把握することにつながり、学力不振や不登校、非行行為の防止や改善に寄与する介入を実施することが期待される。(著者抄録)
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発達心理学研究 26(1) 13-22 2015年3月20日 査読有りこれまでの研究において,我が国におけるいじめ加害・被害の経験率は報告されているものの,いじめに関わる生徒が示す内在化/外在化問題の重篤さはほとんど明らかにされていない。本研究は,内在化問題として抑うつ,自傷行為,欠席傾向を,外在化問題として攻撃性と非行性を取り上げ,いじめ加害および被害と内在化/外在化問題との関連性を調査することを目的とした。小学4年生から中学3年生の4,936名を対象とし,児童・生徒本人がいじめ加害・被害の経験,抑うつ,自傷行為,攻撃性,非行性を,担任教師が児童・生徒の多欠席を評定した。分析の結果,10%前後の生徒が週1回以上の頻度でいじめ加害もしくは被害を経験し,関係的いじめと言語的いじめが多い傾向にあった。さらに,いじめ加害・被害を経験していない生徒に比べて,いじめ被害を受けている児童・生徒では抑うつが強く,自傷を行うリスクが高かった。いじめ加害を行う児童・生徒では攻撃性が強く,いじめ加害および被害の両方を経験している児童・生徒は強い非行性を示した。
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小児の精神と神経 54(4) 345-355 2015年1月1日 査読有り低出生体重で生まれた子どもたちにとって、保育園生活は発達のキャッチアップの時期にあたる重要な時期である。本研究では、保育記録による発達尺度を用いて、低出生体重児の発達の特徴について検討を行った。1都市の全公立保育園13園に通う年少〜年長児917名(男472名、女445名)について保育士が評定したデータを分析対象とした。出生体重2,000g未満を低出生体重群(Low birth weight:LBW)、2,500g以上を正常出生体重群(Normal birth weight:NBW)とし、NDSCの9つの下位尺度および総得点について比較検証した。体重グループ(2水準)×学年(3水準)の2要因分散分析を行ったところ、全9下位尺度のうち、順応性、身辺自立、粗大運動において体重グループ×学年の交互作用が有意になった。全体的な特徴として、学年の上昇とともに得点が上昇すること、また年少あるいは年中でみられた発達差(LBW<NBW)が、年長になるとほとんどの下位尺度においてみられなくなることが明らかになった。(著者抄録)
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発達心理学研究 25(4) 477-488 2014年12月20日 査読有り反応スタイルは抑うつの維持もしくは悪化を引き起こす要因である。本研究は小学4年生から中学3年生の5,217名を対象とし小学高学年・中学生用反応スタイル尺度を開発することを目的とした。既存の反応スタイル尺度を参考に,「反すう」,「問題解決」,「思考逃避」,「気晴らし」の4因子を想定した原案16項目を作成した。探索的因子分析の結果,想定された通り小学高学年・中学生用反応スタイル尺度は4因子(「反すう」,「問題解決」,「思考逃避」,「気晴らし」)で構成されることが示された。さらに各因子間に認められた相関は先行研究の知見に沿うものであった。また信頼性に関して,各下位尺度のα係数は概ね基準以上の値であることが確認された。外在基準とした抑うつおよび攻撃性との相関を検討したところ,「反すう」は正の相関,「問題解決」および「気晴らし」は負の相関を示した。これらの結果は先行研究に沿うものであり,小学高学年・中学生用反応スタイル尺度の構成概念妥当性が確認された。
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小児の精神と神経 = Psychiatria et neurologia paediatrica Japonica : 日本小児精神神経学会機関誌 54(3) 209-219 2014年10月1日 査読有り本研究では、遊びや余暇活動と子どもの精神的健康の関連について、調査協力市の全小中学校の小学4年生から中学3年生5,185名に調査を実施した。遊び・余暇活動は1日に遊ぶ時間について、精神的健康の指標は、抑うつと攻撃性について尋ねた。その結果、抑うつに関しては、「外で遊ぶ」において、参加時間が長くなるほど抑うつが低下する傾向が明らかになった。その他の遊びについては、「テレビ」と男子における「音楽」を除いては、一定の参加時間以降、抑うつが上昇することがわかった。攻撃性については、「ゲーム(個人・友人)」「携帯」「パソコン」「音楽」において、一定の参加時間以降、有意に上昇することが示された。これらの結果より、特定の遊びとの接触のみが問題なのではなく、人数や時間と精神的健康との関連が示され、遊ぶ時間を配慮しながら、屋内よりも屋外で、一人よりも友人と遊ぶことが重要であることが示唆された。(著者抄録)
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発達心理学研究 25(3) 221-231 2014年9月 査読有り本研究では,既存の尺度の因子構造やメタ分析の知見に基づき,養育行動を構成する7因子(関与,肯定的応答性,見守り,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰)を同定し,これらを包括的に評価しうる尺度の開発を試みた。小学1年生から中学3年生までの7,208名の大規模データに基づく確認的因子分析の結果,7因子のうち「関与」と「見守り」の2因子を統合した6因子構造が支持され,当初想定された養育行動の下位概念をおおむね独立に評価しうることが示唆された。また,これらの6因子が,子ども中心の養育行動である「肯定的養育」と親中心の養育行動である「否定的養育」の2つの二次因子によって規定されるという二次因子モデルは,専門家の分類に基づくモデルや二次因子を想定しない一次因子モデルに比べ,適合度と倹約性の観点で優れていることが示された。子どもの向社会的行動や内在化・外在化問題との関連を検討した結果,「肯定的養育」やその下位尺度は向社会的行動や外在化問題と,「否定的養育」やその下位尺度は内在化問題や外在化問題と相対的に強い相関を示すという,先行研究の知見と一致する結果が得られ,各上位尺度・下位尺度の構成概念妥当性が確認された。
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Asp heart : 広汎性発達障害の明日のために 13(1) 154-159 2014年9月 査読有り筆頭著者責任著者
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保育学研究 52(1) 80-89 2014年8月31日 査読有り本研究では,保育記録による発達尺度改訂版(Nursery School Teacher Rating Developmental Scale for Children-Revised:NDSC-R)を用いた就学後の適応及び不適応の予測について検討した。2つの学年コホートについて,保育所年長時に保育士評定尺度であるNDSC-Rを,就学後に教師評定版SDQ(Strengths and Difficulties Questionnaire)を実施し,783名の幼児児童のデータを得た。第1コホート(414名)は小学1年時に,第2コホート(369名)は小学4年時にSDQを行った。重回帰分析及びリスクの分析の結果,就学後(小学1年時及び4年時)のSDQの各下位尺度及び困難性総合得点を一定の精度で予測するNDSC-Rの下位尺度が明らかになった。
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精神医学 56(8) 699-708 2014年8月15日 査読有り本研究は,小中学生の社会的環境への不適応を測定する自記式の評価尺度「小中学生用社会的不適応尺度」を開発し,小学4年生から中学3年生までの5,217名から得たデータに基づいて,その構成概念妥当性を検証した。探索的因子分析の結果,当初想定した4領域構造(友人関係,家族関係,学業,教師関係)が完全に再現され,因子的妥当性が確認された。また,相関係数および重回帰分析によって外在基準(友人問題,否定的養育,学業成績,抑うつ,攻撃性)との関連を検討したところ,理論的な予測および先行研究の知見に整合的な結果が得られ,各下位尺度の収束的妥当性と弁別的妥当性が支持された。(著者抄録)
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心理学研究 85(3) 304-312 2014年8月1日 査読有りWe examined the psychometric properties of the Japanese version of the Autism Spectrum Screening Questionnaire (ASSQ) and developed a short-form. This study included 157 children with autism spectrum disorders (ASD, ages 7–18, 128 boys) and 4,101 healthy controls (ages 7–15, 3,344 boys) from a general population with a controlled male-female ratio. Four factors (Unusual Interests, Sociality, Peer Relations, and Repetitive Behaviors) were extracted by exploratory factor analysis of control group data. Confirmatory factor analysis revealed that the 4-factor model fit well with data for another sample of the control and ASD groups. Logistic analysis showed that the former 3 factors could significantly predict ASD diagnosis. Thus, a short form of the ASSQ was developed, consisting of 11 items for these 3 factors. This short form showed sufficient internal consistency and high discrimination power for ASD diagnosis that was comparable to that of the 22-item version. Receiver operating characteristic analysis indicated an optimal cut-off of 7 for the 22-item version (sensitivity .949, specificity .801) and 5 for the short-form (sensitivity .936, specificity .818).
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小児の精神と神経 = Psychiatria et neurologia paediatrica Japonica : 日本小児精神神経学会機関誌 54(2) 175-183 2014年7月1日 査読有り本研究では、発達障害または学習・対人面の困難さを持つ児童・青年を対象に不安に対する認知行動療法(CBT)プログラムを実施し、その効果を検討した。発達障害または学習・対人面の困難さを持つ就学前から社会人までを対象とした民間学習塾Aに所属する小学4年生から大学生までの13名を対象に不安への対処法を中心としたプログラムを実施した。介入前後に、本人を対象に不安場面に対する対処法の質問紙を実施し、本人および保護者を対象にSCASを実施した。SCASについては高不安群と一般群に分けて分析を行った。結果、介入後に適切な対処法の記述数が増加した。SCASについては、一般群の本人評定で不安の減少が確認された。高不安群では保護者評定では一部の下位尺度で不安の減少がみられた一方で、本人評定では一部の下位尺度で不安の増加がみられた。(著者抄録)
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精神医学 56(6) 501-510 2014年6月15日 査読有り本研究では,単一市内の全公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向およびADHD傾向が小中学校の友人関係問題に与える影響について検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を,SDQによって友人関係問題を測定した。小学1年生から中学3年生までの計7,413名の児童生徒のデータに対する相関および重回帰分析の結果,小中学校の友人関係問題とASD傾向に強い関連がある一方で,友人関係問題とADHD傾向との関連は小さなものであることが示された。これらの結果から,友人関係問題に対するASD傾向とADHD傾向の影響の違いが示唆された。(著者抄録)
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小児の精神と神経 54(1) 17-28 2014年4月1日 査読有り本研究の目的は、Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)の日本語版教師評定フォームの構成概念的妥当性について検討することであった。単一市内の全小中学校に調査を実施し、小学校1年〜中学校3年の7,777名のデータを収集した。分析の結果、SDQの「内在化問題」を表す下位尺度は抑うつと、「外在化問題」を表す下位尺度は攻撃性と相対的に高い相関を示した。また親評定フォーム、自己評定フォームとの関連では、同一名称の下位尺度同士の相関係数が、他名称の下位尺度との相関係数よりも高い数値を示した。以上は、ほぼ理論的仮説を支持する結果であり、おおむね教師評定フォームの収束的・弁別的妥当性が確認されたといえる。また学年ごと(小学校低学年、小学校高学年、中学校)の比較から、主に小学校高学年で、教師評定フォームと他変数との関連が高くなるという結果が得られた。(著者抄録)
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発達心理学研究 25(1) 58-66 2014年3月20日 査読有り本研究では,保育所の年長児に対する縦断調査によって,保育士が日常業務で作成する「保育記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(Nursery Teachers Rating Development Scale for Children: NDSC)」と学校適応との関連及びNDSCを用いた小学校での適応の予測について検討した。単一市内全保育所調査によって386名の園児に対して保育所年長時にNDSCを実施した後,小学校1年時に教師評定による小学生用学校適応尺度(Teachers Rating Scale for School Adaptation of Elementary School Students [All student version]: TSSA-EA)を実施した。相関係数の分析の結果,NDSCと学校適応との関連が示された。重回帰分析の結果,学校適応の下位尺度である学業面,心身面,対人面,情緒面のそれぞれの不適応を予測するNDSCの下位尺度が明らかになった。重回帰分析の結果に基づくリスクの分析の結果,重回帰分析によって明らかになった下位尺度が,学校適応のそれぞれの側面を一定の精度で予測することが示された。
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2(2) 71-79 2014年2月 査読有り筆頭著者責任著者We examined the impact of three-tiered instruction on multiplication facts for Japanese second-grade public elementary students (N=59). In Tier 1 (about three months), all students received regular classroom instruction from their classroom teachers. We monitored the accuracy and fluency of their performance on multiplication facts. In Tier 2 (about one month), teachers conducted a 10-minute supplemental instruction (flash card practice) (n=17). In Tier 3 (about three weeks), students (n=5) practiced multiplication facts through the "cover-copy-compare" method and a timed trial procedure. We calculated the percentage of correctly answered problems and assessed the number of correct and incorrect problems per minute in 1-minute timed trials. A multiple probe design across instructional materials was used to evaluate the effect of Tier 3 instruction. Fifty-three of the 59 students demonstrated mastery of all multiplication facts during Tier 1 and Tier 2. However, the remaining six students including one who did not complete the study did not master all multiplication facts in Tier 3. Results of this study suggest concrete practical issues that should be addressed in future practical research.
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精神医学 56(1) 4-11 2014年1月15日 査読有り本研究では,中学生における非行行為(喫煙,怠学,飲酒,夜遊び,万引き,自転車盗)と抑うつ,攻撃性の関連について検討した。単一市内全校調査を行い,2,334名の中学生を対象とした。全非行行為で経験あり群と経験なし群に分け,攻撃性と抑うつの差異について検討した結果,経験あり群は全非行行為でより高い攻撃性を示し,万引き以外の5つの非行行為でより高い抑うつを示した。また,ロジスティック回帰分析の結果,攻撃性の中で,身体的攻撃は全非行行為に有意な効果を示し,抑うつは,喫煙,万引きを除く4つの非行行為に有意な効果を示した。以上により,攻撃性(身体的攻撃),抑うつが非行行為のリスクを高める可能性が示唆された。(著者抄録)
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特殊教育学研究 52(4) 287-296 2014年 査読有り筆頭著者責任著者本研究では、掛け算スキルの習得に困難がある小学生2名の事例において、掛け算スキルの流暢性に焦点をあてた応用行動分析に基づく指導パッケージの効果を検討した。公立小学校の通常学級2年に在籍する男児2名が研究に参加した。指導は週2回放課後に実施された。指導パッケージには、3C学習法(Cover-Copy-Compare; Skinner, Turco, Beatty, & Rasavage, 1989)と、タイムトライアルを用いた練習における目標設定とフィードバックが含まれていた。タイムトライアルにおける正答数と誤答数を従属変数とし、教材セット間多層プローブデザインを用いて指導効果を検討したところ、2名の掛け算スキルの流暢性が向上し、指導パッケージの効果が確認された。しかし、1名の児童は設定した達成基準を満たすことはできなかった。最後に、指導法の改善点や研究デザインなどの改善点について考察した。
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小児の精神と神経 53(4) 343-351 2014年1月1日 査読有り本研究の目的は、Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)の日本語版自己評定フォームの構成概念的妥当性について検討することであった。単一市内の全小中学校に調査を実施し、小学4年生〜中学3年生の5,072名のデータを収集した。分析の結果、SDQの「内在化問題」を表す下位尺度(情緒不安定、友人関係問題)は抑うつと、「外在化問題」を表す下位尺度(問題行動、多動・不注意)は攻撃性と高い相関を示した。また日本語版SDQ親評定フォームとの関連では、同一名称の下位尺度同士の相関係数が、他名称の下位尺度との相関係数よりも高い数値を示した。以上は、ほぼ理論的仮説を支持する結果であり、日本語版SDQ自己評定フォームの収束的・弁別的妥当性が確認されたといえよう。(著者抄録)
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RESEARCH IN DEVELOPMENTAL DISABILITIES 34(9) 2909-2916 2013年9月 査読有り筆頭著者責任著者The purpose of this study was to explore the relationships between attention deficit/hyperactivity disorder and developmental coordination disorder symptoms and writing performance in Japanese second grade students from regular classrooms. The second grade students (N = 873) in Japanese public elementary schools participated in this study. We examined a variety of writing tasks, such as tracing, copying, handwriting (Hiragana and Katakana), and spelling (Hiragana, Katakana, and Kanji). We employed the Japanese version of the home form ADHD-rating scale (ADHD-RS) and the Japanese version of the Developmental Coordination Disorder Questionnaire (DCDQ-J) to assess the developmental characteristics of the participating children. Seven writing performance scores were submitted to a principal component analysis with a promax rotation, which yielded three composite scores (Spelling Accuracy, Tracing and Copying Accuracy, and Handwriting Fluency). A multiple regression analysis found that inattention predicted Spelling Accuracy and Handwriting Fluency and that hyperactive-impulsive predicted Handwriting Fluency. In addition, fine motor ability predicted Tracing and Copying Accuracy. The current study offered empirical evidence suggesting that developmental characteristics such as inattention and fine motor skill are related to writing difficulties in Japanese typical developing children. (c) 2013 Elsevier Ltd. All rights reserved.
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精神医学 55(6) 549-560 2013年6月15日 査読有り保育士評定によって幼児の適応行動の発達と不適応行動の出現の双方を包括的に評価する「保育記録による発達尺度改訂版(NDSC-R)」の月齢区分ごとの標準値およびカットオフ値について,4年間計9回の単一市内全保育所調査によって得られた延べ10,387名のデータに基づいて検討した。天井効果を補正するため,天井効果によって正規性が損なわれている上位数点を除く範囲では正規分布が成立することを仮定し,得点の上限が存在しない場合の平均値および標準偏差を推定した。この推定の標準値に基づき,3水準のカットオフ値を算出したところ,各判定の実測の相対度数と正規分布上の相対度数はおおむね一致し,標準値およびカットオフ値の妥当性が示された。(著者抄録)
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心理学研究 84(2) 169-175 2013年6月 査読有りThe present study examines the relationship among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression in elementary school and junior high school students. The participants were 3,885 children and their teachers and caregivers. Children’s inattentive and hyperactive-impulsive behavior was rated by their teachers and caregivers (ADHD-RS). Children rated aggression (HAQ-C) and depression (DSRS-C) themselves. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior rated by teachers and caregivers were positively related to aggression and depression. Inattention predicted higher levels of aggression and depression. Inattentive and hyperactive-impulsive behavior as rated by teachers was more highly related to depression than those behaviors as rated by caregivers. The relationships among inattentive, and hyperactive-impulsive behavior, aggression, and depression were almost the same for both elementary school and junior high school students. This study suggests the importance of assessing inattentive and hyperactive-impulsive behavior from multiple views to examine the relationship between inattentive and hyperactive-impulsive behavior and mental health problems.
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精神医学 55(4) 355-362 2013年4月 査読有り本研究では,小中学生における欠席行動と教師評定による学校適応の関連について検討した。小中学校の児童生徒7,183名(男子3,719名,女子3,464名)を対象に調査を行った。小学校低学年と高学年,中学生の3群に分け,学年群ごとに1学期における欠席日数から分類した3群の各尺度得点を一元配置分散分析によって比較した。その結果,欠席が10日以上の多欠席群は4日以下の一般群より,低学年では学業面と心身面,情緒面の問題,高学年では心身面と情緒面の問題,さらに中学生では心身面をはじめとした学校適応全般の問題が高いことが示された。本研究の結果,学年や欠席日数の多さから欠席行動と関連する要因が異なることが示唆された。(著者抄録)
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小児の精神と神経 53(1) 47-57 2013年4月1日 査読有り自治体における3歳児健診はPDD児の早期発見の場として有効である。本研究ではPDD児の特性を把握するためのPARS短縮版をスクリーニングツールとして導入したX市のモデル事業事例を紹介した。事業では心理士・医師などがフォローアップシステム全般を支援したが、保健師の健診技術の向上や将来的な役割委譲を念頭においたものである。PARS短縮版の評定がPDD診断を示すものではないが、全健診参加児のうち保健師は前期で8.45%、後期は7.63%をスクリーニング陽性と判定した。保健師の評定スキルを示す、心理士評定との一致度・欠損値率、心理士評定を基準とする偽陽性率・偽陰性率などの指標において、事業の推移とともに大きく改善がみられた。PARS短縮版の項目ごとの分析から、評定時や面接時の留意点なども明らかになった。最後に、保健師などの非臨床心理学領域の専門家にも取得可能な評定技術としてPARS短縮版を用いた健診システムの有用性が論じられた。(著者抄録)
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精神医学 55(3) 263-272 2013年3月15日 査読有り本研究は,適応行動の発達と不適応行動の出現を包括的に評価する保育士評定形式の尺度である「保育記録による発達尺度」(NDSC)について,項目数の縮小,尺度構成のバランス化,一部下位尺度の信頼性・妥当性の改善を目的として,改訂版(NDSC-R)を開発し,その信頼性・妥当性を検討した。外在基準との関連,主成分分析結果に基づき,尺度構成を再検討し,165項目から94項目への短縮を行った。内的整合性を示すα係数は,項目を削減した尺度では.90前後の値を維持し,項目を追加した尺度では原版より改善がみられ,全学年で.70以上の値を示した。外在基準であるSDQやADHD-RSとも原版と同等か,それ以上の相関が示され,基準関連妥当性が確認された。(著者抄録)
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臨床精神医学 42(2) 247-255 2013年2月28日 査読有り筆頭著者責任著者小中学生を対象とした日本語版Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)教師評定フォームの信頼性と妥当性について検討した。公立小学校および公立中学校の小学校1年生から中学校3年生までの児童を対象に調査を実施した。7,777名のデータについて、学級担任から収集することができた。小中学生を対象とした日本版SDQ教師評定フォームは、原版とほぼ同一の因子構造を持ち、十分な内的整合性を有した。学年による違いについては、全体的に小学校5年生前後で高得点のピークとなり、その後得点が低下する傾向が見られた。各下位尺度の標準得点は、性別・学年によって違いが見られた。
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臨床精神医学 42(1) 119-127 2013年1月28日 査読有り筆頭著者責任著者日本語版Strengths and Difficulties Qusetionnaire(SDQ)の項目分析、内的整合性、下位尺度の相互相関、学年別・性別の標準得点とカットオフ値の検討を行った。小学4年生〜中学3年生5,072名を対象に、SDQ自己評価フォームを用いた。5つの各下位尺度のα係数は、0.39〜0.76だった。下位尺度の相互相関はいずれも0.40を下回っており、異なる側面を捉えている結果であった。尺度の標準得点は、問題行動では男子が、向社会的行動では女子が高い得点を示した。情緒不安定では女子が男子よりも高い得点を示した。友人関係問題は学年とともに低下する傾向があった。向社会的行動も学年とともに下降する傾向があった。他の下位尺度においては、一貫した変化は見られなかった。パーセンタイル順位の上位10%(向社会的行動については下位10%)が臨床水準、次の10%が境界水準となるようカットオフ値を設定した。尺度の一定の信頼性と妥当性は確認された。
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精神医学 54(9) 911-914 2012年9月15日 査読有り広汎性発達障害(pervasive developmental disorder;PDD)特性把握のための評定尺度PARS(PDD-Autism Society Japan Rating Scale)幼児期短縮版を,自治体保健センターの3歳児健診におけるスクリーニングツールとして導入した。PARS短縮版は12項目からなる半構造化面接式のアセスメントツールであり,カットオフポイントは5点である。内的整合性はα=.76と十分な信頼性を示した。スクリーニングによる陽性児の男女比がおおむね3:1と先行研究に一致した。健診参加児1,202名のうち119名が陽性となり,陽性率は9.9%となった。PARS短縮版による陽性判定を受けた対象者のすべてがPDDの診断を受けるわけではなく,実際のPDDの有病率とは異なるが,全住民参加型の健診システムにおける一次スクリーニングツールとしての有用性が示された。(著者抄録)
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臨床精神医学 41(7) 925-932 2012年7月28日 査読有り小中学生における欠席行動と抑うつ、攻撃性の関連について検討した。6714名(男子3450名、女子3264名)を対象とした。抑うつについては、Birleson Deression Self-Rating Scale for Childrenの日本語版を用い、攻撃性については、Hostility-Aggression Questionnaire for Childrenの日本語版を用いた。1学期間における欠席日数について、担任教師が実数を記入した。小学校高学年の不登校傾向群が統制群よりも高い抑うつを示した。中学生の多欠席群(4〜9日欠席)と不登校傾向群(10日以上欠席)が統制群よりも高い抑うつを示した。中学生の不登校傾向群は、統制群より高い攻撃性を示した。学年が上がるにつれて欠席行動と抑うつの関連が強くなること、中学生の不登校傾向群に高い攻撃性が関連することが示唆された。
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精神医学 54(7) 673-680 2012年7月15日 査読有り本研究では,一般中学生における自傷行為の経験および頻度と現在の抑うつの関連について検証した。東海地方近郊市のA市内全校調査によって,2,304名の中学生からデータを収集した。自傷行為の経験率は,「ピアス」が1.87%,「打つ自傷」が9.02%,「切る自傷」が3.95%であり,ピアスおよび切る自傷では女子が男子より有意に高い経験率を示した。いずれの自傷行為の経験についても,現在の抑うつと高い相関を示すこと,特に女子の打つ自傷,切る自傷においてその傾向が顕著であることが示された。また,自傷行為の頻度も現在の抑うつの程度と有意に関連することが示され,身体改造の一種であるピアスもその頻度が現在の抑うつと有意な相関を示すことが示唆された。(著者抄録)
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精神医学 54(4) 383-391 2012年4月15日 査読有り筆頭著者責任著者本研究では,児童・生徒の適応と精神的健康の状態を包括的に把握可能な心理尺度として国際的に幅広く利用されているStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)の日本語版親評定フォームについて,単一市内全校調査による検討を行った。先行研究における対象者の年齢層を拡張し,愛知県内の保育園・幼稚園の年少児から中学3年生までの7,835名の親または養育者からデータを収集し,学年・性別ごとの標準得点と信頼できるカットオフ値を得た。また,日本語版SDQは,原版とほぼ同一の因子構造を持つこと,十分な内的整合性を有すること,先行研究の知見と整合的な学年・性別間の得点の差異がみられることが示され,高い信頼性・妥当性を有することが再確認された。(著者抄録)
MISC
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研究紀要 2 29-34 2023年3月22日type:Article 行動分析学は行動と環境との相互作用という視点で子どもを観察し、より効果的な指導方法を検討しつづける理論からなっている。知的障害があると読みの習得に困難が生じやすいことが予測されるため、より効果的な方法で学ぶことが求められる。しかし個別性の高さや学びにくさがあるため学校現場では読み指導を「いつ、何を、どのように」行えばよいのかを判断することが難しい。行動分析学における刺激等価性という枠組みや文節単位読み手続きを使った読み指導について先行研究を調べたところ、指導の前提としての言語の重要性、苦手部分の迂回学習や指導時間の短縮ができること、複数の刺激を効果的なタイミングや場所や時間で正確に提示できるICT 活用の有効性などが示されていた。また指導の途中でも子どもの反応に応じて介入方法を変更することや、単に特定の文字が読めるだけでなく読み方の方略を学ぶことで般化が促されることも示されていた。先行研究では学童期の子どもが研究対象となっていることが多かったため、中学部、高等部段階での指導効果について今後検討したい。
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教育実践研究 16 1-12 2022年 筆頭著者type:Article 本研究の目的は、公立小学校において学校規模ポジティブ行動支援(SWPBS)第1 層支援を実施し、その効果および社会的妥当性を検討することであった。介入手続きとしては、まず、全教職員が協議してポジティブ行動マトリクスを作成し、その中から挨拶行動と話を聞く行動を目標行動とした。次に、各目標行動に対する行動支援計画を作成し実行した。AB デザインによって介入効果を検証した結果、学年毎の効果の違いはあるものの、全体として各目標行動が増加した。また、社会的妥当性に関する質問紙調査の結果、目標行動・手続き・介入効果について一定の妥当性が示された。今後の課題として、より厳密な研究デザインによる効果検証や実行度データの収集、簡便な行動観察方法の開発等が示された。 The purpose of the present study was to examine the effect and social validity of the Tier 1 intervention within the framework of the school-wide positive behavior support(SWPBS)in a Japanese public elementary school. A public elementary school implemented SWPBS for two years in collaboration with an external consultant. As a Tier 1 intervention, school teachers developed a behavior matrix and selected the target behaviors(greeting behavior for first year, and listening behavior for second year). Then, they developed and implemented each behavior support plan. A single- case AB design was used to evaluate the effect of the Tier 1 intervention on each target behavior. The homeroom teachers observed the students' greeting behavior in their class and support staffs observed listening behavior during class. Results showed that greeting behavior and listening behavior were increased and maintained, although there were differences in the effect by grade level. In addition, homeroom teachers rated the social validity of the Tier 1 intervention(target behaviors, procedures, and intervention effects) as highly acceptable. Implications for future research were discussed, including the verification of the reliability of behavioral data, use of more rigorous research design to evaluate the intervention effect, measuring fidelity of the procedure, and the development of a simple behavioral observation method.
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LD研究 = Japanese journal of learning disabilities 28(2) 234-240 2019年5月
書籍等出版物
12講演・口頭発表等
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日本LD学会第33回大会倫理委員会企画シンポジウム「集団を対象とする学習支援研究を進めるために解決すべき倫理的課題」話題提供 2024年10月 招待有り
担当経験のある科目(授業)
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2024年10月 - 現在インクルーシブ教育論 (大阪教育大学)
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2024年10月 - 現在多様な子どもとインクルーシブ教育 (大阪教育大学)
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2023年4月 - 現在特別支援教育の実践 (大阪教育大学)
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2023年4月 - 現在特別支援教育の基礎 (大阪教育大学)
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2023年4月 - 現在応用行動分析学 (大阪教育大学)
共同研究・競争的資金等の研究課題
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2021年4月 - 2025年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2021年4月 - 2025年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2021年4月 - 2024年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 2018年4月 - 2021年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 2018年4月 - 2021年3月